全国各地の原発立地自治体の首長への要請

昨年6月から9人で「さようなら原発1000万人アクション」を始めた、呼びかけ人たちが2月8日、日本外国特派員協会で記者会見しました。そこで発表したのが、各地の原発立地自治体の首長へあてた、原発を再稼働させないよう求める要請文です。




大江健三郎さんは「原発を全廃すると決意しようではないか。貧困や混乱が生じても明日の日本の子どもたちの生活はある。それが大切にしなくてはいけない唯一の倫理だ」、「倫理という言葉を、日本人は新しい意味で使い始めた。倫理に責任をとろうとするなら、今、原発を廃止するという決断を示さなければならない」と語りました。


要請

まず、昨年3月11日の東日本大震災およびそれに伴う福島第一原発の過酷事故により被災された方々、失われたかけがえのない多くの命に、心からのお見舞いとお悔やみを申し上げます。

さらに、被災者のために力を尽くしてこられた自治体首長のみなさま、とりわけ被災市町村の方々の、困難を乗り越え、復旧にむかう御努力に敬意を表します。

福島原発の爆発事故は、大量の放射性物質を原子炉外に拡散させ、福島の人びとからふるさとを奪い、また多くの人びとの生活を破壊し、地域と自然環境に甚大な被害をもたらしました。そのうえ事故は現在も進行中で、汚染が今後どのように地域と人体に影響を与えるかもわからないまま、私たちは健康と将来への不安の中に生きることを余儀なくされています。

このような悲惨をけっして繰り返さないように、私たち9人は昨年6月、原子力発電に頼らない社会を目指して、「『さようなら原発』1000万人署名」と脱原発のための5万人規模の集会を呼びかけました。集会は昨年9月19日に開かれ、東京の明治公園に6万人を超える人々が集まり、脱原発の意思を力強く表明しました。また1000万人署名も大きな広がりを見せています。

日本政府は、原発に依存しない社会をつくるとして「エネルギー基本計画」を今春にも示し、国民的議論を展開するとしています。しかし、一方で原発の稼働期間を事実上60年に延長することを可能にする「原子炉等規制法改正案」の提出や停止原発を稼働させるための「安全評価(ストレステスト)」の容認など、無反省に、事故前の状況に回帰しようとしています。

しかし、福島原発の事故とその後の顛末から明白になったことは、「安全な原子力発電」などというものはあり得ないという厳然たる事実です。つまり核と人類は共存できないのです。終末的災厄をようやく生き延びた私たちが、ふたたびこの地震頻発国で自滅を図るような行為は許されません。

地域住民の生活と命の安全を守るために、日夜こころを砕いておられるみなさま。命に勝る経済効率などはないことをご賢察ください。いま停止中の原発の稼働を認めず、行き場のない使用済み核燃料をこれ以上ふやさないようにしてください。

今回の事故で地震にもっとも弱いのが使用済み核燃料プールであることが周知されました。決して再稼働を認めることなく、代替エネルギーの道をともに考え、原発のない社会へむかいましょう。みなさまの再稼働を認めない慎重な姿勢は、日本中ばかりか、世界の人びとの支持と信頼を勝ち得ております。これは誇るべき決意です。

さらに今後も、原発に依存しない社会を実現させ、地域のひとたちを安心させ、新時代にむかって歴史をつくる、強い指導力を発揮されんことをお願い申し上げます。

(原発立地県知事・市町村長名)殿

 2012年2月8日

  「さようなら原発」一千万人署名市民の会

  呼びかけ人

            内橋 克人(経済評論家)
            大江健三郎(作家)
            落合 恵子(作家)
            鎌田  慧(ルポライター)
            坂本 龍一(音楽家)
            澤地 久枝(作家)
            瀬戸内寂聴(作家)
            辻井  喬(詩人・作家)
            鶴見 俊輔(哲学者)

6件のコメント

  1. 結果論ですが,高額で危険な電気代になりました.
    責任論も,あまり語られないまま終わりそうです.

  2. ピンバック: 【報告】2.18 四国と北海道で開催された集会 | さようなら原発1000万人アクション

  3. 他の問題は別として、この問題だけは先送りする訳には行かない。原発廃止の決断を先送りにすることは、明らかな危険に目をつぶることに他ならない。危機に際して神風が吹かないことは日本人はとうの昔に学んだはずだ。これから行われる営々たる復旧・復興もスマートシティも経済成長も、また原発震災が起これば全て台無しになってしまう。安心して生活もできず落ち着いて仕事もできないような今の状況こそが経済を低迷させている原因だと思う。日本はドイツに学ぶべきだ。ドイツでは福島原発事故後2ヶ月で脱原発を決断し、それまで取り組んで来た自然エネルギー・シフトを加速していると聞く。決定当初は国内の経済界、原子力業界から電力不足と経済への悪影響を懸念する声が出され、日本も含めた海外からは原子力発電の盛んなフランスから電気を輸入すれば結局同じではないかとなじられたが、あにはからんや今ではフランスに電力を輸出しているのだ。目を覚ませ、日本!

    「ドイツ、脱原発後もフランスに電力輸出」
    2012年2月8日 フランクフルター・アルゲマイネ紙(オンライン版)
    http://www.faz.net/aktuell/wirtschaft/trotz-atomausstiegs-deutscher-strom-rettet-frankreich-11642130.html

    福島の事故直後、原発を停止したドイツはフランスからの電力輸入を必要としており、また脱原発による電力供給不足や停電も懸念されていた。しかし、いまやドイツは逆にフランスへ電力を輸出する立場だ。
    フランスでは、今般の大寒波到来で電力需要が先の火曜日に100,500メガワットの過去最高を記録した。夜の時間帯に、人々が一斉に電気暖房のスイッチを入れるためである。
    100,500メガワットという消費量は、1200メガワットの発電能力を有する原発80基以上の発電量に相当する。これに対してドイツでは夜間の電力消費量は50,000メガワットにすぎない。フランスよりも1500万人以上の人口を抱えるにも関わらずである。
    これは、ドイツでは電気暖房の数がフランスよりもずっと少ないためだ。フランスでは電力不足のため、電力市場価格が34セント/KWhまで上昇している。ドイツの市場価格の約3倍である。
    ・・・・

    フランスの電力会社がよりによってドイツの電力に頼らざるを得ないという状況は、フランス政府にとってのみならず、ドイツの原子力ロビーにとっても好ましいものではない。フランスでは、昨年の福島事故後のドイツの原発8基停止を「勇み足」として、嘲笑するような動きも見られた。一方ドイツでは、電力会社の幹部が、フランスからの電力輸入は「エネルギーシフトが誤りだった」ことの証明であると述べていた。

    しかし、現在欧州の送電事業者の管理画面上のドイツの位置には、ほぼ一日中、「輸出過多」を示す黄色のランプが表示されている。電力輸出の一部は常にフランスに向かっている。当のフランスには、計約6万メガワットの発電能力を有する55基の原発が稼働しているにも関わらず、一日のほぼ全ての時間帯で「自国の発電所では需要をカバーできない」ことを示す青のランプが光っている。

  4. 人間のコントロールの及ばない核エネルギー(原発)は即刻廃止すべきと思います。大江健三郎氏の再び不事故は必ず起こるとの予測は正しいと思います。原発に頼らなくてもなんとかやっていけることは、この1年間で証明されています。原発の必要のない社会を維持するためには私たちの生活様式を変えていく必要があります。原発がないと日本社会はやっていけないという金儲けの宣伝に長年騙され、気が付いたら東電をはじめとする大資本と大資本の利益を代弁する政治家にかけがえのない命を売って来ました。風力・水力・化石燃料等の代替エネルギー利用に早急に切り替えていく必要があります。
    2度と原発事故を起こさせないためには、地震国日本から、また、世界から悪魔である原発を廃止しましょう!!

  5. 原発がたとえ 絶対に事故を起こさないとしても 高濃度放射能汚染物質(廃炉)
    は必ず発生し、地球を永久に汚染し続ける。どうする事も出来ない。そんな物は絶対に造ってはいけない。造らない、造らせない、使わない。この時代にいる人の使命です。
    今、原発を止めないと未来に対して取り返しが付かない。使わない為の覚悟しなければ。

  6. 今ではもう毎週のようにあちこちでデモが行われている。最初のころは燃えあがり、片っ端からデモ梯子して駆けまわったけど、今では、とても、つきあいきれない。電車賃倒れもいいところだ。それでも、てっぺんの肘掛け椅子どもは、うんざりしている取り巻きの弱みにつけ込んで再稼働にあらゆる手を駆使している。たぶん、あがいているんだろう。原発を止めるのはわたしたちだが、もし、押し切られれば蛙みたいにぺしゃんこに打ちのめされるだろう。
    3・11の郡山、4月、そして、この7月が山場だ。反原発・反貧困・反差別のエリートさんも、尻馬乗りも、どん底をのたくり歩く僕たちしものしものほうも、道路に飛びだし、「いい加減にさらせ」「もういやだ」と声をあげ、沈黙した世論の深淵に火をつけよう!!

    ホームレスやフクシマを見殺しにしてひとりで生きていくなんて、もう出来なくなったのだ。

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