県民実行委員会の主催で「原発のない福島を!県民大集会」開催される

 3月23日、福島市「あづま総合体育館」を会場に、福島県内の団体や個人で構成される大会実行委員会の主催で「原発のない福島を!県民大集会」が開催され、約7000人が参加しました。

 始めに、呼びかけ人で曹洞宗 円通寺住職の吉岡棟憲さんが、国と東京電力に対し、「心底から謝罪することもなく、ウソと隠ぺい。許すことはできません」と開会のあいさつを行いました。続いて、実行委員長で福島県平和フォーラム代表の五十嵐史郎さんが「2年が経ったが、様々な努力があっても県民は成果が実感できない。この集会を福島に希望が持てるものにしたい」と力強く発言しました。
 また、福島大学教授で呼びかけ人代表の清水修二さんは、被害は停電と放射能だけではないとして、避難先での摩擦に苦しみ、被害者同士が避難する、避難しないで二つに引き裂かれている現状を訴えました。
 「さようなら原発1000万人アクション」からの連帯のあいさつでは、体調を崩し欠席となった作家の大江健三郎さんに代わって、ルポライターの鎌田慧さんが発言しました。続いて行われたさまざまな立場からの県民の訴えはどれも胸を打つものでした。
 集会では前段にアトラクションがあって、サブアリーナ等では地元の物産品などの出店もありました。

(写真:今井明)

集 会 宣 言

歴史的な地震・津波・原発事故の大災害から、早や2年の月日が流れました。地震と津波による2万に近い犠牲者の御霊(みたま)に、あらためて哀悼の意をささげます。
一方、世界史に残る原発事故が引き起こした大規模な被害は、福島県にとどまらず東日本の広い範囲に及んだことが明らかになっています。そして計り知れない犠牲と損失を生んでいるこの災害は、今もなお進行中であり、いつ終息するとも知れない深刻な状況が続いています。
原発事故がまだ終わっていないということは、私たち福島県民にとっては疑いようのない現実です。けれども国民一般の意識の中で、福島原発災害はすでに過去の出来事になりつつあるのではないがとの懸念を、私たちは抱かざるを得ません。
「放射能では誰も死んでいない」というのは、正しくありません。避難の途中で、あるいは避難生活の中で命を落とした人は、自殺した人を含め、きわめて多数にのぼっています。福島県の「震災関連死」の数が突出して多く、1,300人にも及んでいるのは、紛れもなく、放射能による避難やストレスが原因です。
県民の多くは依然として低線量放射線被ばくへの不安から解放されていません。政府の指示によって避難を余儀なくされた人、および自主的に避難した人の数は県内外に合計16万人。この数字はなかなか減る気配がありません。2年に及ぶ避難生活は、肉体的にも精神的にも多くの人々を追いつめています。帰還の見通しが立たず移住という選択をせざるをえない人、あるいは故郷に帰る希望をもちつつも、それがいつになるか分からない状態の中で悩み、苦しんでいる人が何万人もいます。賠償金に依存した生活が長引くことによる弊害も出始めています。避難者と、避難先の住民の間で生まれている心理的な摩擦も無視できません。
現在、膨大な国家予算を投入して復興に向けた事業が行われています。しかしこの2年間で、福島県は復興の足元を固め、再生の道を確実に歩み始めたかといえば、必ずしもそうは言えません。放射能汚染という現実が、どうしても復興の前途に立ちはだかります。生活の安全と産業再生のためには放射能の除染が必須ですが、その除染作業への信頼が揺らいでいます。除染廃棄物の中間貯蔵施設の立地選定も緒についたばかりです。
しかしながら、前代未聞の諸困難に直面しつつも、福島県内の多くの個人、組織、団体は、懸命になって事態打開のために努力しています。被災した町村はそれぞれの復興計画を練り上げています。福島県と農協はコメの全量全袋検査を実施するなど、県内産農産物の信頼回復に全力を挙げています。至難と言われる森林の除染、そして林業の再生のため、森林組合は懸命な努力を重ねています。県内の漁業はいまだに操業自粛が続いていますが、試験操業をしながら再開の道を探っています。風評被害に苦しんでいる観光業もNHK大河ドラマを機に起死回生を図っています。生協は「子ども保養プロジェクト」で放射線被ばくからのストレスを軽減するため活動しています。また被災し避難している住民自身やボランティアも頑張っています。ばらばらになった住民が相互に支えあい、仕事を起こし、コミュニティの絆を維持する活動が各地で立ち上がっています。
福島県内のこうした困難な現状、そして県民の苦闘に対し、国の行政は、果たして真剣に目を向けていると言えるでしょうか。東京電力は賠償請求に真摯に対応し、加害責任者としての義務を果たしていると言えるでしょうか。また国の政治は、このような災害を招いた原子力事故を二度と起こさないという、使命感と決意に燃えていると言えるでしょうか。
いま目の前にある生活上の苦境をどう乗り越えるがということもさることながら、いまここにある原発をどうするが、これこそ、私たち県民が考えずにおれない重大問題です。事故を起こし破壊に至った4基の原子炉は、今後起こりうる大地震に果たして耐えうるのか、いつ本当に安全な状態に落ち着くのか、それさえまだ分かっていません。事故現場ではきょうのこの日も、高い放射線を被ばくしながら、多くの労働者が作業に従事していることを、私たちは忘れてはなりません。
そして問題は第一原発5・6号機、および第二原発の1~4号機の扱いです。県知事と県議会はともに、県内10基の原発すべての廃炉を求めています。これは多くの県民の気持ちを率直に反映したものです。しかし東京電力はこれを受け入れていないどころか、再稼働を当然の前提としているかのように、6基の原発の保守管理をすすめています。
総選挙の結果、「原発いらない」の声は、国政には届きにくくなりました。けれども福島県民は、断じて「福島県の生き方」を譲るわけにはいきません。福島県と地元自治体は確かにかつて原発を誘致した経緯があります。原発の立地と運転による経済的利益があったのも事実です。しかし取り返しのつかない今回の大災害の中で、原発を抱え込むことのリスクが途方もなく巨大であり、金銭的利益と天秤にかけることなど到底できないことを身をもって知りました。原発を誘致したのは間違いだったと、私たちは今はっきりと断言することができます。また全国に向けてそう声を上げることこそ、被災県としての使命ではないでしょうか。
「原発のない福島を!」「安心して暮らせる福島を!」これは福島県民の願いであり、心の叫びです。世界史の中で特別な位置におかれたというべき福島が、しっかりと再生に向けた道を歩むために、原発依存からの脱却=原発との訣別はまさに出発点であり、大前提でなければなりません。
県内外に避難している県民のみなさん、避難せず踏みとどまっている県民のみなさん、役場ごと避難、あるいは避難者を受け入れている自治体の首長やスタッフのみなさん、さまざまな分野で悪戦苦闘している産業界のみなさん、ばらばらになった生徒たちの教育の行く末を案じている教育界のみなさん、そして子どもたちの健康被害や社会的差別を心配せずにおれないお父さんやお母さんたち、本当に「原発のない福島を」実現するために、お互いに支えあい、心を一つにして、頑張りましょう。

2013年3月23日

原発のない福島を!県民大集会

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